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2020年10月21日更新 投稿者

林業を考える(第1回)

Salon de ∫u kenの第4回目、古川泰司さんの「森と林業のマーケティング」から触発されて書くことにした、林業から社会を考えてみるという1回目です。

古川さんのお話の中には、林業というものを資本主義という尺度で考えることの限界が散りばめられていました。

そもそも木が商品となるには、30年という歳月が必要です。
(これも誰でも学んでいることです。もちろん、北海道の下川町のお話で出てきたエゾマツ・トドマツなどは、もう少し周期が長いようです。)
30年間の維持費が最終的に30年後に回収されるというモデルと考えられます。
30年間の維持費を捻出するには、一本20000円で売れるということが山を守っていくという意味では、必要な前提なのだそうですが、現状は10000円。
そもそも、いくらで売買できるかは、原木市場のマーケットで決まるということになりますから、
これほどリスキーな商品はないということになります。

非常にデフォルメして言えば、

30年後にいくら戻ってくるかわからない。
今の雰囲気だと掛け金の半分くらいしか返ってこないです。
もしかすると、すごい金額になるかもしれませんけど。

っていう金融商品があったら買う人がいるだろうか?

こんなもの、誰も買わないでしょう。
これが、林業というものがそもそも資本主義では、もう少し正確にいうと「市場原理主義」では成立していないという実情そのものを表しています。

資本主義とは何か、ということを、少しイメージしてみることにします。

新潟県朝日村奥三面という今は、ダムに沈んだ町が集落があります。
ダムは、縄文時代から積み重ねてきたであろうこの町の生活の知恵を途絶えさせました。
(その良否は問いませんが、)この地域の人々は、その知恵を「山に生かされた日々」という素晴らしい生活誌として、それを記録に残しました。

その一頁に、人がその周辺の土地の周辺の生態系と生きてきたことを示す、一枚の図が掲載されています。

「植生と暮らす」と題されたこれは、今では世界中から集まる物で生きている我々の、つい数十年前まで営まれていた姿なのです。

これをしっかりと時間を正しい尺度にして書き直してみます。

米粒のような「家」の周りに、生きるための土地が大きく広がっているように見えます。
これだけの土地の利益で、我々は生きてきた、「生かされてきた」ということを示しています。それだけ自然というものの恩恵を我々は受けて、DNAをつなげてきたということにアンリます。

これに、資本主義の「秩序」を入れると、見え方が一変します。
「インフレ率」もしくはそこから導かれる「金利」というもので姿を変えてみます。
難しい話は抜きにすると、すぐに利益にならないものは小さくなり、すぐに利益になるものは大きくなるというのが、この尺度で世の中の見る見方であり、資本主義の「秩序」です。

これが、「資本主義」の本質です。

ほとんどのことが家の周りの概念で埋め尽くされてしまい、地域、下手をするとご近所ですらも、遠い存在に見えてくる。
資本主義が進んだことの帰結はこの姿だと言えます。
当然、家の周りの自然はとても小さなものになります。森や森林・林業が小さく見えるのも、資本主義が定着した結果というわけです。

地方活性化で移住定住というすぐに見える対策には飛びつくが、5年、10年で大人になる子供の教育には、保護者は別として地域の関心が高くない、というようなことも、このことで説明ができます。
双曲割引ともいいますが、このことは、物事を考える上で、人が犯しやすいバイアスでもあると思っています。

第1回目でお話したかったことは、資本主義で豊かになった現実とともに、見失ってしまったもの、過小評価されてしまったものがあるという現実です。だからこそ、そろそろ別の「秩序」は何か、ということを、考えなければいけない時代がきているように感じます。

2回目は、「では、どう考えいけば良いのだろうか」ということを、少しお話をしてみたいと思っています。

(少しばかりの参考1)
古川さんのお話によると、樹木の成長率は30年から40年にかけて大きく、年輪を重ねると成長量は減ってゆき、70年くらいになるとほとんど成長しないと言われているそうです。
この考え方に従うと、バイオマスと行った一次エネルギーでの利用を考えると、30年くらいで切っていくのが効率的ということになります。
(少しばかりの参考2)
朝日村奥三面のお話は、Salon de ∫u kenの第3回にゲストでお越しいただいた、福島県西会津町の一般社団法人BOOTの代表で、素晴らしい古民家宿である楢山集落を経営されている、矢部佳宏さんにご紹介いただいたものです。メンバー全員が、この話に釘付けになりました。

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