2022年1月3日更新 投稿者 代表理事:澤 尚幸
2022年を迎えて
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
年末からブログを振り返っていたら、「2020年、2021年と弊社の総括も、私自身の総括も、ほとんどできていなかったな」と反省です。
そのまま元旦を迎えてしまいました。
少し、この2年間と、その中での、Community Future Designの関わりを振り返ることから2022年を初めてみたいと思います。
環境を見ると、コロナ禍一色と言っても良いのではないかと思います。
オンラインが急速に進み、在宅だけでなく、「どこにいても良い」という環境が進みました。
実際、我々も、メインのオフィスは早々に退去しましたが、なんら不便を感じていません。
教育についても、新学習指導要領への変化の中で、一人一台というGIGAスクール構想が前倒しで実施されました。
「これ、どう使えばいいんでしょう?」
という声が、導入当初、多くの先生たちから語られました。
「使いたいという気持ちと道具立て」の両輪がうまく機能することの重要性も改めて感じました。
どちらかが0なら、何をかけても0になる、というお話です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)も、日常的に使われる言葉になりました。
- デジタルは手段であって目的ではない。
デジタル化とデジタルトランスフォーメーションは違う。大事なのは、前処理(業務プロセスを根本から見直すこと)だ - という言葉も、この界隈ではよく聞かれるようになりました。
これ、全てルールと、それに無意識に縛られている自分(たち)というお話に収斂します。
ちょうど、2021年の秋、「ルール?展」なるものに行きました。
いろいろ考えさせられる体験だったのですけど、端的にいうと、
- ルールを使うと、物事が統一されるので効率化される
- ルールを使うと、必ず損得が生まれる。つまり既得権益が生まれる。
- 環境が変わればゲームチェンジをしたくなるけど、既得権益が邪魔をする
ということをしみじみと感じました。
ちょうど、この「ルール?展」の中に、シビックテックのコーナーがあり、
「履歴書にテンプレートは必要?」
という、謎かけがありました。
この時にふと感じたのは、
「会社・組織が人を選ぶ時代から、人が会社・組織を選ぶ時代」
に変化しているのに、
「履歴書を出すのは人であって、会社・組織ではない」
ということに、改めて、”おかしさ”のようなものを感じたことを鮮明に記憶しています。
個別最適な学び、とか、個性、とか、多様性、とか口では気持ちの良いことが語られていますが、実際に、これを実装するとなると、非常に難しい。
特に普通でやるとコストが跳ね上がります。
ここをクリアできるのが、デジタルの力だ、正確にいうと、通信やネットワークの力、と言っても良いのかもしれません。
ここから、我々の2020年、2021年の取り組みです。
1 福島県西会津町のこと
まずは、福島県西会津町です。
西会津町には、2018年からおじゃましています。
教育の取り組み、まちづくりなど、それだけを捉えれば、人口減少社会におけるどこにでもある地域課題ということになります。
しかも、おおよそ「町民が主体」と書いてあるのですけど、主体であっても、主体的に動ける人となるとそう多くはない、というのが現実です。
ここに、チャレンジしてみようという取り組みをやってきました。
2019年度が助走期間、2020年度から本格的に協働のまちづくり推進委員会を作って推進をし始めました。
薄町長とも何度かお話しをしました。
「シビックプライドを醸成してみましょう。」
「きっと、町民一人ひとりは、やりたいことがあるはず。やりたいことなら、率先してみなさん動いてくれるようになります」
半信半疑だったと思いますが、町長には快くYesと言っていただき、少しばかりの予算も付けてくださいました。
- 最初のワークショップで、町民のみなさんのやりたいことがどんどん出てきたこと
- 1年の締めくくりでの町長プレゼンまでに行動が生まれて、行動した結果をお話できたこと
そして、2021年度が始まった時に、委員の皆さんから
「委員会が今年度も始まると思いますが、それまでにもう仲間を増やしてどんどん初めてしまっていいですか?」
という一言が皆さんから発せられた時に、
「あ、これが町民主体だな」
と涙が出そうになったのを記憶しています。
この町民主体の考え方は、西会津町のCDOの藤井靖史さんが、デジタル分野にも拡張してくださいましたし、都市計画という目線でも、「まちづくりデザイン会議」として新たな流れを生み出してくれている2021年度になっています。
2 會津価値創造フォーラムのこと
この流れの原動力には、官民連携のプラットフォームの構築がありました。
「會津価値創造フォーラム」
です。
そもそもは、2011年の東日本大震災を契機として立ち上げられた、官民連携の組織でした。
「震災復興と、人口減少社会に対峙し、地域が持続するために、若者の力をもっと生かしていこう」
という考え方が基礎にあります。
私は、これを、
「自分のやりたいことをやる。みんなが相互に応援する」
という考え方でリストラクチャーする、ということと理解して、皆さんにお声をかけさせていただきました。
2020年度から本格的にリブートし、2021年には、内閣官房の地方創生カレッジで取り組みを3日間みっちりご報告できるようになりました。
岐阜県DX推進戦略会議でもご報告させていただいています。
3 コレクティブ・インパクトのこと
2020年の春から、慶應義塾大学SFCで、SFC研究所の上席所員として、そして、秋からは修士課程の学生として研究活動も行うようになりました。
これまでお話しした西会津町や會津価値創造フォーラムの取り組みなどは、コレクティブ・インパクトといって良いのかな、ということを学びました。
その基礎にあるのは、
「私が行動する」
です。
井上英之さんの講義を聞いて腑に落ちて、薄々感じていた、成功のための手法は、その後に出版された、『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』に鮮明に書かれていました。
実際、私の20代後半から40代後半までは、郵政民営化の真っ只中の20年でした。
民営化後に最初にやったことは、職員のやりたいことから会社を変える、という取り組みでした。
2年ほど、ほとんど東京の本社にはいない、というほど、地方を回りました。
通って、そこで「その職員が”お客様のために”やりたいこと」を聞いて、GOを出すという仕事です。
霞ヶ関から指示をすれば動く、指示文書を出せば仕事が終わる、という時代に対する違和感を、郵政民営化の後に実装できた、という体験でした。
これが、 “いま”につながっています。
その理論的な意味合いを、10年ほど経過して学んでいる自分がいます。
2020年、2021年と、福島県磐梯町、岐阜県、広島県福山市・神石高原町、長崎県壱岐市など、いろいろな地域でお世話になりました。
実際に、伺った市町村は数えられないほどになると思います。
「この人は、自分のためではなく他人のためにやりたいことがある」
という人は、本当に清々しいな、と思います。
そんな時間をいただけたことに感謝したいと思います。
個別最適を進めると、ルールというものが非常に緩くなります。
中央教育審議会は、「個別最適な学び」「協働的な学び」という、両方を掲げています。
どっちも大事ですが、この中間に落ちると、どちらでもないものになります。
私は、これを「光の三原色理論」と言っています。
ルールで縛ると、「誰もやりたくないこと」しか創られないということになります。
これまでの「私が行動する」を続けつつ、
2022年は、この難しい問題に、少しばかりチャレンジしてみたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。