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2021年2月23日更新 投稿者

ミーハー的観光(その2)「アニメストリート以上、聖地未満」

実際に行って見て聞いて食べてみた「へ~な体験」をつづる、ミーハー的観光。
シリーズ2作目は、老若男女を対象に永久不変な人気をもつジャンル、「アニメ」から

「アニメストリート以上、聖地未満」

と題してアニメが及ぼすさまざまな影響力について事例とともにふれてみたい。

近年、アニメツーリズムという言葉が一般化している。2020年のコロナ禍にあって、巣ごもり生活、不要不急の外出は避ける等の理由により、「あつまれどうぶつの森」を筆頭に家庭内でのゲームが人気である。ゲームとは別に、アニメや漫画の作品、その舞台となった地域、建物など実際の現地に訪れる旅行のことで、「聖地巡礼」とも呼ばれる。最近では、2020年秋に封切りの劇場版「鬼滅の刃」が、宮崎駿監督作「千と千尋の神隠し」(316億8000万円)を抜いて歴代最高興収で1位になったそうである。日本のアニメ人気は、いまに始まった現象ではなく、古くは「サーキットの狼」(池沢さとし・少年ジャンプ1975-1979)スーパーカーブームと共に峠の走り屋が関東周辺の群馬や相模湖等の峠道を探し出し、爆走したこともアニメが切っ掛けであろう。、また「ゲゲゲの鬼太郎」(水木しげる)作家の出身地である鳥取県境港市に「水木しげるロード」が整備され鬼太郎をはじめアニメのキャラクター数十体のブロンズがメインストリートに設置され、まちづくりに成功している。

2007年に放映されたアニメ「らき☆すた」、(埼玉県旧鷲宮町・現久喜市)の主要な舞台が、登場人物の自宅が鷲宮神社をモデルにしているとしてネットで話題になり、例年初詣五万人程度の参拝客が、数年間で10倍近くの47万人近くになった当りから自然発生的に「聖地巡礼」現象となった。

一昨年訪問した茨城県大洗町ではアニメ「ガールズ&パンツァー」の聖地巡礼が盛んで、県内有数の名所大洗神社には、多くの絵馬が奉納されていた。アニメツーリズム・聖地巡礼の特徴としては「リピーター」が多く、観光産業的には願ったり叶ったりの現象である。県立大洗女子学園に転校してきた主人公が、戦車を使った武道「戦車道」が、華道や茶道と並んで大和撫子のたしなみとされている世界に巻き込まれていくストーリー。町内のあらゆる店舗(魚屋、文房具、クリーニング等)で一店舗1キャラクター設定がされており、等身大パネルが設置されている。

こういった現象に触発されたのか、JR東日本では中央線高円寺駅と阿佐ヶ谷駅のガード下に「阿佐ヶ谷アニメストリート」を、アニメ文化を発信する商業施設として鳴り物入りでオープンしたのは2013年。それから7年。今はどうなっているか2020年の秋に現地を訪れてみた。2019年に閉鎖され、現在は、子育て世代を応援するコミュニティ空間」をコンセプトとする「商業施設・アルーク阿佐ヶ谷」と変貌。躯体の原型は留めたまま、コスプレ衣装の販売店、アニメソングが流れるカフェ、キャラクターグッズ、フィギュアの販売店などが入っていた店舗には、テナントを変えて、語学学校、café、フルーツshop等が静かに営業していた。

アニメをテーマとしたまちづくり、活性化等、全国で多様な取組をしているが最初から企画すると集客が叶うというのは幻想である、という事例を見せつけられた。その廃墟を見届けたという印象であった。そこでなければならない理由、必然性、ストーリー等があってのアニメであり聖地巡礼であろう。首都圏では埼玉県が全県を挙げて「アニメ聖地巡礼プロジェクト」を数年来取り組んでいる。クレヨンしんちゃん、らき☆すたから、秩父や飯能など多くのアニメがその舞台となっている地域が多い。実は「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の出身地は埼玉・東京・山梨の三県にまたがる日本百名山の1つにも数えられている「雲取山(2017m)」という設定。今年の夏は登山者の増加が期待される。

 

「らき☆すた」公式HP
http://www.lucky-ch.com/

人気アニメ「ガールズ&パンツァー」の町・大洗
https://www.ibarakiguide.jp/seasons/girls_und_panzer.html

阿佐ヶ谷アニメストリート」は、なぜ“死んだ街”になったか・exciteニュースhttps://www.excite.co.jp/news/article/Cyzo_201812_post_186564/?period=1

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