2017年11月7日更新 投稿者 代表理事:澤 尚幸
国産の漆のこれから(SCC里山カフェ#2)
「漆」
英語で“japan”。
にもかかわらず、国産は全体のわずか2%にも届かないという希少品。
その国産漆の増産を目指し、国産漆の生産をする株式会社浄法寺漆産業を起こされた、元岩手県職員の松沢卓生さんのお話をお聞きしました。
東京でお話をさせる機会は少ないらしく、多くの方が集まられていました。
岩手県の浄法寺は、日本の漆の70%近くを生み出す地。
そこですら、25人の漆掻きの職人に、その道具を作る職人が1名という状態。
掻き手の技術で、大きく漆の品質が左右され、
また、その道具作りも、極めてデリケートとのこと。
10年から15年でやっと漆が取れる木に育ち、夏から秋にかけて収穫。
1本から、たった200ccしか採取ができず、一度、収穫するとその木は終了。
苗木作りだけでも、「かぶれるから」ということで、作業が嫌がられる。
漆の木自体も、非常にデリケートらしく、他の地域の苗木がうまく根付かないと言った場合も少なくないとのこと。
紀伊半島で育った私には、山道で普通に見られて、
「かぶれないように」
と避けて通っていた自分に、それほどのデリケートさは、全く予想をしていませんでした。
では、国産がなぜ良いのか?
デリケートということは、漆の品質が外国産とは違ってくる、と言っているようなものです。
- 硬度が得られるけど、乾きにくい(正確には化学反応なので、乾いているわけではない)
- 金箔の定着に優れている
- 流れるような漆の為、ムラなく塗ることができる
と言った特徴があるようです。
だからこそ、日本の文化財には、国産漆を!、という文化庁の方針もあるのだとか。
ニーズはある。でも、事業性が薄い。
経済原則からいうと、なんだかありえないわけですが、これが実情。
対処方針もないままに「国産を!」と言ってしまう文化庁にも疑問はあります。
塗り師さんは伝統工芸の職人としてそこそこいるものの、漆自体を作る人がいない。
このバランスも不思議と言えば不思議。
しかし、松沢さんの夢は明確でした。
今までのような手作業は、本当の一部の高品質のもとして残しつつ
新たな技術により、
- 成長の早い漆を探す
- 一本の漆からより多くの漆を抽出する技術を探す
といった研究を進めておられるのだとか。
本来、国レベルで進めてもおかしくない仕事を、たった一人の企業で進めている松沢さんに脱帽です。