地域の課題を解決するための伴奏者

一般社団法人 コミュニティ フューチャーデザイン COMMUNITY FUTURE DESIGN

COLUMN

コラム

CFD HOME > コラム > 澤ノートをめぐる冒険 vol.2

2023年1月20日更新 投稿者

澤ノートをめぐる冒険 vol.2

前回のコラム【澤ノートをめぐる冒険 vol.1】では、澤のアドバイザー業務におけるノートの役割について考察し、以下のキーとなる言葉たちが掘り出されました。

  • 自分のことは「自分だけ」を見るのでは把握しづらいが、対比する対象があると理解しやすくなる
  • データから「絶対解」は導けないが、データの差分はここにありそう、と「見当をつける」ことは可能だと思われる
  • 差分を探せるとゴールへの道筋が見えてくるので、それをノートで整理できたらプロジェクト成功の目算が立つ

データ分析とはほぼ無縁の文系人生を送ってきたワタクシ・オバチャン事務員からすると、このうちの「差分がここにありそう、と見当をつける力」については非常なる「勘所」が必要と思われ、ハードルが高すぎるように思えました。

しかし、澤によると「そんなことはありませんよ」とのこと。

そこで今回は、誰でもできる?差分の見当をつけるコツ、について深掘りしてみたいと思います。


まず最初の疑問なのですが、

  • ある未知の課題が目の前にある
  • 誰も解いたことがないので、解決法があるのかどうか、何かに取り組んで成功するのかどうかすらわからない
  • でも期限内に何らかの成果を上げないといけない雰囲気

という状況に置かれたとき、普通の人は「ワクワク」するよりも「コワイ」「やりたくない」といったネガティブな気持ちのほうが強くなる気がするのですね。

この図でいうと、①や②の気持ちになる人が多いのではないかと思うのです。

ところが、澤さんの場合は③常に「ワクワク」の気持ちが強いように見えます。それはどうしてなんでしょうか。

そうですね。実のところ、「ワクワク」が強い、というわけではないのです。私は、特にワクワクしなくても「やらねばならない」と思えることであれば、目標に設定すべきと思っていますから。

この図に沿っていえば、重要なのは、「コワイ」をなるべく減らす取り組みをし続けることだと思います。「コワイを如何に減らせるか」が勝負です。

では、コワイを減らすためにはどうしたらよいか?

それには「世の中で起きそうなことは大体何かのアナロジーである」とわかっている感覚が大切だと思っています。

アナロジーとは「類推」ですね。目の前の事柄から似たような事例を類推する。そうして具体から抽象へ思考を引き上げてより高い視点から事象を把握する、といった感じでしょうか。

そうですね。これが、

自分のことは「自分だけ」を見るのでは把握しづらいが、対比する対象があると理解しやすくなる

と繋がってくる考え方ですね。

私は今の仕事をする前には教育分野に携わったことはなく、教育関係のアドバイザー業務は初めて取り組む課題ばかりなわけですが、だからといって「コワイ」とは感じないんですね。

それは、これまで経験した中から、類似した事例を引き出すことができるからだと思っています。それができると、目の前の課題が「全く経験がないこと」ではなくなる。

そうすると、コワさが減る。

澤さんと現場の先生方との協議で、子どもにどう教えるか、という話をするときに、「自転車に全く乗れない子どもに、さあまずは乗って走ってみよう、と言っても無理ですよね」なんて話から入りますよね。例え話がとても分かりやすいと感じます。

目の前の問題に集中しすぎて視野が狭くなってしまっているときに、ふっと俯瞰して考えさせてもらえるような、そんな気づきを得ることがよくあります。

先生方との協議で抱くのは、先生たちにはアナロジーの源泉となる経験を得る機会がないのではないかという懸念です。

「自分だけ」の世界に入り込んでしまっていて、もしくは、外に出ていく時間や余力がなくなってしまっていて、他の大人が何をしているかを学ぶ機会がない。

そもそも、対比する「他」の存在がないと、違いを認識できません。対比する対象がわからないと、結局自分自身について把握ができないということになります。違いがわかるための他との関係性を作る場がないのは、とても不幸なことだと思います。

私が協議に入らせていただく相手側の先生方には、この、アナロジーを獲得する経験に近いものを何とか味わってもらいたい、という強い思いをもって接しています。

アナロジー思考が身に付くことで、目の前の課題を「未知のコワイもの」から「あ、なんか、できそうかも、ワクワク」というレベルに落とし込めそうですね。そんなワクワクを追い求めながら仕事ができたら幸せですよね。


ところでもう1つ、澤さんについて気になっていたことがありました。それは、とても絵がお上手で、わかりやすいということです。

こうした絵を、おそらくほとんど直すこともなく、ササっと描いていらっしゃると思うのです。

構図の捉え方なのでしょうか?絵心のないワタクシにはどういう風に筆を始めたらこのような絵が出来上がるのか想像もつかないのですが、これも何か特徴的な資質の現れなのでしょうか?

絵が上手・・かどうかはわかりませんが、現役の教育長さんに、ホワイトボードの書き方が上手だとお褒め頂いたことはあります(笑)

例えば1時間の協議で、ホワイトボードを途中で消すことなく、スペースをバランスよく使って必要な項目を書き切ることができるのは、ちょっとした自慢です。

それができる理由として、やはり、抽象化して考えることが得意だということが挙げられるのではないかと思っています。

始めにホワイトボードに書き出す時に、既に全体のイメージがなんとなく頭の中にあるんですね。あくまでぼんやりとですけれど。そして、書いていくうちに、そのぼんやりしたものが、少しずつ形として明確に、具体的になっていくという感じです。

書き出したい事柄を抽象化して大きなひとまとまりとして捉えることができている、そういうスキルが身についているということなのかもしれないと思っています。

常日頃から「自分は数学科出身なので、抽象化して考えることが得意です」と仰っている澤さんですが、その得意分野が板書や絵の出来栄えにも関係しているとは、目から鱗な視点です。

実はこのコラムを書くにあたり、アナロジー思考を理解したいと、ある本を読んだんです。そうしましたらその中に「政策アドバイザーとはアナロジー思考のできる人。抽象化思考のできる人。」という記述がありました。まさに、アドバイザー職は澤さんの天職なんだなと納得しました(笑)


アナロジー思考により、未知の課題へのコワイを減らす

そうして日々の生活に「ワクワク」を増やすことができたら、と考えるだけで楽しそうです。仕事だけでなく、プライベートでも大変役立つ思考法のように思えますし、確かに、心がけしだいで誰でも取り組めるように思いました。

以上、1枚の「澤ノート」から想像以上に深い世界を冒険できました。また何かネタを見つけて、澤さんのお仕事解剖をしていく予定です。

 

PAGE TOP