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2024年7月24日更新 投稿者

流動化と企業と地域

最近、転職の相談を受けることが増えた。

私が就職活動をしていた1990年代は、終身雇用が当たり前だった。転職するにしても35歳までと言われていた。

今は、就職しても数日で辞めてしまう。退職代行サービスなんていうものがあると聞くと、本当に世の中が変わったと感じる。(私は、48歳で転職した。昔なら路頭に迷っているだろう。。)

若者が辞めてしまう理由には、「私を認めてくれない会社だとわかった」とか「休日が少ない。残業が多い」とか、おじさん的には、何言ってんだ、という理由もあって、それはコメントしても仕方がない気がするのだが、私が相談を受けるケースは、

「この会社にいると自分のキャリア形成ができる気がしない」
「自分がやりたいこと、実現したいことができそうにない」

というのが圧倒的に多くて、

「この給与では暮らせない」

というものは、さほどない。


ふと、地方から人がなぜ流出するのか、ということも同じだなと思った。

地方からの人の流動化は、集団就職を思い起こす。と言っても私は、その時代には生まれていない。私の親の世代のことだろう。

第一次産業中心の地方では、限られた資源(例えば、田畑)の取り合いになってしまう。仕方なく、長男以外は都会に出ざるを得ない。

一方で、これは国家的な政策だったとも言われている。

都会に行けば仕事もあるし賃金も高い。仕事をしながらの進学もできる。

実際、私の親の世代には、定時制で学んだ、大学も夜間に通ったという人が少なくなかった。

つまりそういう仕組みを作れば、高度成長期に都会の工場に人を集めることができたのだ。「金の卵」ともてはやされたこともよくわかる。要するに「キャリア形成」の姿を見せていたことは事実だろう。

「優秀な奴は都会に行け」という地方の文化が定着したのは、この政策の延長線上にあるとも言える。


では、今の地方創生はどうだろう。

東京の一極集中の是正、地方への人口移動が目標になっているが、

「地方に行けばキャリア形成ができる」という姿が見えているだろうか?

(「女性の人口の減少」が昨今話題になっているが、それには今回は触れない)

地域おこし協力隊は、本来、地方での起業という文脈だったはずだが、行政の作業員になっているケースも散見される。

実際、地域の人から「来てくれたけど、何もしてくれなかった」という声を聞くことも少なくない。そもそも地方で育っていない都会の人が、地方に入ると、「文化の違い」に戸惑うことが多く、その先に進まないうちに協力隊の年数が終わってしまうケースをよく見る。

給与についても、確かに、地方で地域おこし協力隊の給与は決して少なくはない(それだけ地方の所得が低いということでもある)。

しかし、どこで働いても良いなら、都会にもっと高い給与があるのだから、その給与で働くためには、敢えて都会よりも安い給与を選んででも得たい「キャリア」が得られることが地方に求められるだろう。

仕事上、移住定住の議論に関わることが多く、コロナ期には企業移住のアンケートをとったことがあるが、その時は

「新しい人脈ができ、新しいことにチャレンジできる」

を求める声が高く、「行政の支援や補助」は必ずしも高くなかった。

企業の移住と個人の移住は全く一緒とは思わないが、「キャリア形成ができます」という政策ではなく、「住居費が負担されます、移住の支援金が得られます」という、なんだかなぁ、、、という相変わらず政策を続けている自治体が少なくない。

“金の切れ目は縁の切れ目”と昔から言われている。

「キャリアという資本が積み上がる」

そういう政策を提示した地方や企業に、人が集まってくる。

 

私も、「ここだったらなんかできそう」というところで活動したいと思うし、多拠点の居場所にしたいと思う。

これが、いろいろな地域を訪れて感じる実感だ。

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