2022年9月2日更新 投稿者 CFD
文章の多様性 ~オバチャンによるマネジメント考 vol.2~
こんにちは。本日も再びオバチャン事務員が担当いたします。
まずは質問です。みなさんは、人と一緒に仕事や日常のやりとりをする中で
目標の共有ができているのだからやることはこれしかないだろう、と思っていたのに、いざ行動してみたら相手が想定とは全然違うことをやりだして愕然とした
もしくは、
伝えたからわかっているだろうと思ったのに、いざ動いてもらったら全然わかっていなかった
という経験をされたことはないでしょうか。
オバチャン事務員は、仕事でもそうですが、日々の育児でも超がつくほどよくある現象です。
そして、そんな事態を避けるためにどうしたらよいのか、日々模索中です。おそらくこれは人生をかけて模索していく大テーマなんだろうと思っていますが、まずは足元からできることを考えてみよう!
ということで、今回のテーマは「伝え方の多様性」です。中でも「文章」にフォーカスします。
先日「オバチャンによるマネジメント考」を書きましたが、私は、自分で自分の書いたものを見直したときにいつも「どうにも平易な文章だな」と思ってしまいます。
あまり「プロフェッショナル」という感じがしません。それは、これまでの人生で、論文や企画書といったものを書く経験が乏しかったせいかもしれません。
自分はこういう文章しか書けないし、平易であることが悪いことではないと思っている、と開き直っているのでこうして書いておりますが、では同じ内容でも、書きぶりをもっと高尚な感じといいますか、論文風にしてみたらどういう文章になるのだろうか?という「問い」が急に湧いてきました。論文風にしてみたら、「プロフェッショナル」な感じになって読者層が広がる、という「仮説」が立つのではないかと。
そこで、この「オバチャンによるマネジメント考」を題材に、その昔、研究者を目指して博士課程にまで進んだという長年の友人に、「博士論文風に書いてみてもらえないだろうか」という(大変くだらない)打診をしたところ、あっという間にそれっぽい風に書き換えをしていただけました。もう長年、仕事でもプライベートでも地域のよろづオバチャン業に邁進している友人。大変忙しい中、企画につきあってくださりありがとうございます。
そんなわけで、以下にその虚構抄録を掲載いたします。言葉遊びとして、比較を楽しんでいただけたら幸いです。ちなみに、コラムでの読みやすさを重視し、原文から少しレイアウトを変更しております。
※なお、以下は完全なる「虚構」になりますこと、お含みおきくださいますようお願いいたします(当たり前)。
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オバチャンによるマネジメント考―質的手法による概念の明確化【虚構抄録】
背景と目的
近年、組織を取り巻く環境は大きく変化し、従前からのマネジメント手法では十分な課題解決に至らず、組織の停滞と生産性の低下をもたらすことが指摘されている。
このような状況において、近年「オバチャン」といわれる卓越した組織構成員によるマネジメントが注目されている。
本研究では、この「オバチャン」によるマネジメントの概念を明確化し、令和時代の組織運営に資する知見を得ることを目的とする。
方法
本研究では「オバチャン」を「仕事、子育て、介護といったライフイベントを通じて複合的な障壁を経験し、それに対処した妙齢女性」と操作的に定義した。
対象は、本定義に該当し、調査時点で組織マネジメントに従事している6名(平均年齢48歳)である。
「日常の業務において心がけていること」「組織の構成員とのコミュニケーション」等について、インタビューガイドを用いて60分程度の半構造的面談を行い、面接内容の逐語録から質的帰納的に分析し、コアとなるカテゴリを抽出した。
結果
オバチャンのマネジメントの構成概念として、3つのコアカテゴリが抽出された。
「あたしゃ家に帰っても時間との戦いなわけよ。さっさとメシつくらないと腹減ったって子どもが泣くでしょ。まあ旦那もたまに泣いてるけど、そっちは無視してるわよ。もう、マジで24時間働けますか状態で、一日が終わるころにはクタクタよ。こんな感じで時間に追われてるから、物事は常にサッサと決めるわけよ。まあ、結論に至らないこともあるけど、とにかく決めるのは早いのよ。」(41歳・行政職員)。
オバチャンは仕事に加え家事、育児といったマルチタスクを慌ただしくこなす日常であり、自由になる時間が限定される。このような生活に身を置く中で、「時間がないのでさっさと決める」マインドが醸成されることが推察され、【意思決定の速さ】が一つ目のカテゴリとして抽出された。
「まあ、バタバタしてるんですけど、おしゃべりは大好きなんですよ。仕事しながらでも、Facebookのチャットとか、バリバリやっちゃいますね。ほら、今の若い子って、直接話すとちょっと引くじゃないですか。でも、チャットだと結構本音をいってくれて、なーんだ、こんなことに悩んでんだ、ってことがよくわかるんですよ。あ、たまにはへんてこな意見言ってくるとか、どうしようもないな、って子もいるんですけど、ちょっと投げ方を変えると、案外ちゃんと考えるんだな、ってこともあって。」(45歳・製造業)。
オバチャンは他者を理解する上でのフラットな対話を重視し、自分より年少の組織員に対して「母親的目線」で対応することはあっても「上から目線」ではない。業務の合間の短時間のやり取りから多くの情報を得ていることが推察され、【トークへの情熱】が2つ目のカテゴリとして抽出された。
さらに、
「私自身、まだオバチャン駆け出しの頃は、ザ・ニッポンの古典的タテ社会の壁にぶち当たって、心の強さを保てずに落ち込むこともあったんですよ。他部署とのイザコザが紛糾したときにいつまでも相手の説得を試みようとしたりね、まだそんなことやってるんですか、って言われてね。でも、やっぱり物事って、そう、0か1じゃないんですよ。いい塩梅にね、落とし込むというか、それは大事だと思ってて。」(48歳・団体職員)。
組織においてしばしば発生するコンフリクトは、明確な解決や線引きができない場面も多い。これをオバチャンは白黒をつけて解決するのではなく、【ソフトランディング】な解決を意図していることが推察された。
考察
オバチャンによるマネジメントの構成概念として、【意思決定の速さ】【トークへの情熱】【ソフトランディング】といった3つのコアカテゴリが抽出された。
これらは近年注目されている「サーバント・リーダーシップ」の概念とも一致するものと考えられる。
オバチャンは階層を超えてフラットな環境下でディスカッションし、お互いが納得できるような合意形成を目指すマネジメントを得意とすることが示唆される。
今後は抽出されたカテゴリ間の関連性を検討し、「オバチャン力」の概念枠組みを明確化すること、さらには「オバチャンオジチャン」といった性別に依存しない新たなオバチャン像についての検討を深めていきたい。
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いかがでしたでしょうか。同じ内容を基にしていても、伝わり方が随分異なるように思えます。(その1)のほうが分かりやすい方もいらっしゃれば、(その2)のほうがよく頭に入る、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。読み手の方がどんな文体に慣れているのか、どのような思考タイプなのかによって、頭に入りやすい、入りにくい、が決まるような気もします。
こう考えると、1つ文章を書くのでも、色んなパターンで書いてみる、というのは、面白いアプローチかもしれません。私自身「なるほど、そんな風にまとめられるのか」と思えた箇所がいくつもあり、自分の思考がブラッシュアップされたような気がしております。重ね重ね、こんな企画にお付き合いくださり、ありがとうございました。
文章の多様性、ひいては伝え方の多様性については、これからも考察を深めたいと思っています。参考になるアイディアがありましたら、読者のみなさんからも共有いただけたら嬉しいです。