2022年8月23日更新 投稿者 CFD
オバチャンによるマネジメント考
初めまして。本日はCFDに参加して1年半のオバチャン事務員が担当いたします。
採用時、澤代表に「現場にオバチャンの力が必要なんです」と言われました。この言葉がずっと心に残っておりまして、「オバチャン力(りょく)ってなんだろう」と考え続けてきたこの1年半ですが、最近ぼんやり概念が見えてきた気がしたので、書き留めておくことにしました。
さて、まずは、職場におけるオバチャンとはどのような生態なのでしょうか。その生態、もとい魅力について述べたいと思います。
オバチャンの意思決定力
オバチャンはやらねばならないことへの決断は結構早いです。「それ、やらなきゃならないことね。じゃ、今やっちゃいましょう。決めちゃいましょう。」となります。
仮に今、結論が出なくても、「今やるか。それともやらないか。」だけでも決めます。
どうしても今やり終わらない場合は「どうやって、いつごろまでに終わらせられるだろうか。」とロードマップをシミュ―レーションします。
なぜならオバチャンには時間がありません。今、この場でやる。今、決めないと、すぐに家に子どもが帰ってきます。その後は怒涛の育児家事のマルチタスク時間。あれこれ忙殺されているうちにあっという間に寝る時間がきます。そしてその頃には中年のオバチャンは気力体力を全て子どもに吸い取られ、すっかりクタクタです。
じっくりのんびり、オフィスで毎日夜中までPCに向き合って悩むような時間はないのです(ただし、子どもの送迎中、自転車に乗りながら瞑想する時間はあります)。
そういうわけで、毎度結論にたどり着けるかはともかくとして、決めるスピードは速い、と言えるかと思います。
オバチャンのトークパワー
基本的に日々忙しいオバチャンですが、トークへの情熱は熱いです。
マルチタスク中でもチャットであればちゃちゃっとやってのけることが可能です(ダジャレ)。
そして短時間のメッセージのやり取りからでも結構な情報量を得ることができるため、相手の状況を驚くほど深くまで理解することも可能です。
仕事でも同じことが言えます。おエライ感じで上から目線で話をすることはしません。というより、できません。むしろボトムのほうから、関係者1人1人がどういうモチベーションを持っているのか、どんな問いをもって、どんなスタンスでお仕事されているのか、そんなことを知りたいという気持ちから関係を出発させることが多いのがオバチャンのように思います。
なぜなら、そのほうが、お互いの考え方が違ったときに、その原因を探る手掛かりになるからです。考えが違うときに「あの人はデキナイから」と勝手に相手の非にしていても、物事は進まないことを知っているからです。そこで一歩踏み込んで話をしたら、実はお互いに歩み寄って進んでいけるかもしれないと信じているからです。
比較的強いメンタルを持つと思われるオバチャンですが、1人のニンゲンがオバチャンになるまでには、そうはいっても、障壁をいくつかは経験してきたはずです。私自身、まだオバチャン駆け出しの頃は、ザ・ニッポンの古典的タテ社会の壁にぶち当たり、心の強さを保てずに落ち込むこともありました。他部署とのイザコザが紛糾したときにいつまでも相手の説得を試みようとして、「まだソフトランディング目指してるんですか?」なんて呆れ顔で指摘されたこともあります。
ですが、そう。オバチャンのオバチャンらしい仕事スタイルって、この「ソフトランディング」なように思います。
そして、つい最近、このソフトランディングをベースにするマネジメントスタイルは、「サーバント・リーダーシップ」という概念がとてもしっくりくるように思えることを知りました。
サーバント・リーダーシップこそオバチャン力
サーバント・リーダーシップとは、1970年ごろにアメリカのロバート・K・グリーンリーフにより提唱された考え方だそうです。(「サーバント」という英語からは虐げられた存在としての否定的なイメージを持ってしまうかもしれませんが、ここでは、奉仕するという行為に重点を置いた意味で使われています。)
この方の著書から極めて大雑把に私が理解した範囲で述べますと、いわゆる一般的な「強いリーダー」といえば、階層的な組織の中でトップダウンで決断を行う、カリスマをもって時には力業で大衆を導くイメージがあるのに対して、「サーバント・リーダー」はチームを基盤とし、説得やコンセンサス追求を重視する。グループとしての意志(=ビジョン)を明らかにしようと、メンバーの話を聴き、話を整理することによってメンバーの意欲をかきたてる。ビジョンの達成の為に無理やり誰も彼をも従わせようとするのではなく、メンバーを納得させようと行動し、結果的に組織の目標達成に向けての行動につなげていくスタイルのようです。
似たような概念として、日本には昔から「根回し」によるコッソリとした合意形成の文化がありますが、私は、「サーバント・リーダー」はコッソリではなく、オープンに、階層を超えてフラットな環境下で議論して、お互いが納得できるような合意形成を目指していくところが、根回しとは違う点だと理解しました。
さて、オバチャンはもとから階層をあまり気にしません。それはオバチャンの母としての経験から、社長さんでも新入社員でも、威張ってる人も、弱そうな人も、みんな産まれたときは何もできない可愛い赤ちゃんだった、という事実を知っているからです。
どんな人に出会っても、
「頑張ってここまで生きてきたんだね~。ヨシヨシ。」
「そんなに強がっちゃって、何か強がらないといけない理由があるんだね~。ヨシヨシ。」
という愛情のまなざしで見ることができるのがオバチャンの良いところなのです。
ですから、階層にはあまり囚われずに話をします。むしろ、してしまいます。そして、説得、というより、「その人の考えを知るトーク」が大好きですから、
「これやりたくないのかい?なんでだい?」
「これできないのかい?なんでだい?」
「困ってるのかい?どこが大変なんだい?」
といった具合に、つい話しかけてしまいます。または、話しかけたくなってしまいます。
いかがでしょうか。オバチャンのこうしたアプローチは、サーバント・リーダーシップにかなり通ずるものがあるのではないでしょうか。もしくは、普段のオバチャン型アプローチに「ビジョンを明らかにしていく」「みんなで達成できる目標を意識する」という視点を持つようにするだけで、ただの「井戸端トーク」が、「マネジメント」に昇華していくのではないでしょうか。
少なくとも私には、「あら。社会におけるオバチャンスタイルに市民権があったわ。」という嬉しい驚きがありました。
オバチャンの未来は明るい
昨今、「心理的安全性」「ウェルビーイング」といった言葉も重要なキーワードとして取り上げられています。こうした言葉が必要とされる時代、そこにはオバチャンの力が発揮できる余地が十分にあるように思います。
オバチャンが普段何気なく使用しているコミュニケーションスタイルが、実は、サーバント・リーダーシップという言葉で括れるような概念的なマネジメントスタイルである、と考えると、オバチャンが社会で果たせる役割は限りなく大きいのではないでしょうか。
冒頭述べた、澤代表の言葉も、この時代の風を肌で感じているからの発言ではないでしょうか。
人生100年時代。オバチャンの未来は明るいです。そう自信をもってオバチャン道を進んでいけばよいのではないかと思っています。